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男性不妊を理解するブログ

無精子症の基礎知識|閉塞性・非閉塞性の違いと治療の選択肢

無精子症の基礎知識|閉塞性・非閉塞性の違いと治療の選択肢

こんにちは。メンズファーティリティクリニックです。

泌尿器科や不妊の悩みは相談しづらく情報も錯綜しやすいため、このブログでは専門医の知見をもとに、できるだけ分かりやすく整理してお伝えします。

男性不妊にはさまざまな原因があり、その中でも精液中に精子が確認されない状態を「無精子症」といいます。自覚症状がないことも多く、妊活をきっかけに受けた精液検査で初めて分かる場合もあります。

無精子症では、状態によって必要な検査や治療の考え方が異なります。閉塞性無精子症では精路再建や精子採取、非閉塞性無精子症では精巣内から精子を探す治療などが検討されることがあります。ただし、どの治療が適しているかは、精液検査や診察、ホルモン検査、遺伝学的検査などを踏まえて判断します。

この記事では、無精子症と診断され、今後どうすればよいか不安を感じている方に向けて、閉塞性・非閉塞性の違いや主な検査、治療の選択肢について分かりやすく解説します。

はじめに:無精子症でも、精子がまったくつくられていないとは限りません

精液検査で精子が確認されなかったとしても、精巣内で精子がまったくつくられていないとは限りません。
特に閉塞性無精子症では、精巣内で精子がつくられていても、通り道の問題で精液中に出てこないことがあります。

精子がつくられていても通り道の問題で精液中に出てこない場合と、精子をつくる機能そのものが低下している場合があるためです。

無精子症と診断されたときに大切なのは、1回の精液検査だけで今後を判断しないことです。
必要に応じて再検査を行い、問診・診察・ホルモン検査・遺伝学的検査などを組み合わせて、閉塞性か非閉塞性か、精子採取や治療の選択肢があるかを確認していきます。

この記事を読めば分かること

  • 無精子症とはどのような状態なのか
  • 閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の違い
  • 無精子症の原因を調べるために行われる主な検査
  • 無精子症と分かった後の治療や選択肢

精液が出ていても、無精子症の可能性はあります

精液が出ていても、無精子症の可能性はあります

無精子症は、精液そのものが出ない状態ではなく、精液中に精子が確認されない状態です。そのため、普段どおり射精できていても、精液中に精子が含まれているかどうかは分かりません。

精液と精子は同じものではありません

精子は精巣でつくられ、精巣上体や精管などを通って運ばれたあと、精嚢や前立腺などから分泌される液体と混ざり、精液として射出されます。

つまり、精子は精液に含まれる成分の一つです。精液の量や色、見た目だけでは精子の有無を判断できないため、確認するには精液検査が必要です。

無精子症と無射精症は異なる状態です

「無精子症」という言葉から、精液そのものが出ない状態をイメージする方もいるかもしれません。しかし、無精子症と無射精症は異なります。

  • 無精子症:精液中に精子が確認されない状態
  • 無射精症:射精時に精液を射出できない状態

無精子症では、射精そのものに大きな変化を感じないこともあります。そのため、精液の見た目だけではなく、精液検査によって精子の有無を確認することが重要です。

理事長の言葉

精液の量や見た目に変化がなくても、精子が含まれているかどうかはご自身では判断できません。
無精子症は自覚症状がないまま精液検査で初めて分かることもあります。妊活を考えている方や、妊活を続けても結果が出ず不安がある方は、まず精液検査で現在の状態を確認することが大切です。

無精子症は「閉塞性」と「非閉塞性」の2つに大きく分けられます

無精子症は、原因によって「閉塞性無精子症」と「非閉塞性無精子症」の2つに大きく分けられます。
どちらも精液中に精子が確認されない状態ですが、閉塞性は主に精子の通り道に問題があり、非閉塞性は精子をつくる機能が低下しているという違いがあります。

閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の違い

比較項目閉塞性無精子症非閉塞性無精子症
主な問題精子の通り道がふさがっている精子をつくる機能が低下している
精子をつくる機能基本的に保たれていることが多い低下している
精液中の精子確認されない確認されない
主な原因炎症、手術、先天的な精路の異常など停留精巣、染色体・遺伝的要因、がん治療の影響など
治療の考え方精路再建や精子採取などを検討micro-TESEなどで精巣内の精子採取を検討することがある

閉塞性無精子症|精子はつくられていても、通り道がふさがっています

閉塞性無精子症の特徴

閉塞性無精子症は、精巣で精子をつくる機能は保たれているものの、精子の通り道である「精路」がふさがっている状態です。

精巣でつくられた精子は、精巣上体や精管などを通って運ばれます。しかし、その途中に閉塞があると、精子がつくられていても精液中まで出てくることができません。

閉塞性無精子症の主な原因

精路がふさがる原因には、過去の病気や手術によるもののほか、生まれつきのものもあります。

  • 精巣上体や精管などに起こった炎症
  • 過去の手術による精路への影響
  • 先天性両側精管欠損症(CBAVD)などの先天的な異常
  • 検査を行っても原因を明確に特定できないもの

非閉塞性無精子症|精子をつくる機能が低下しています

非閉塞性無精子症の特徴

非閉塞性無精子症は、精巣で精子をつくる機能が低下し、精液中に精子が確認されなくなっている状態です。

ただし、非閉塞性無精子症だからといって、精巣内で精子がまったくつくられていないとは限りません。精巣全体で一様に機能が低下しているとは限らず、一部で精子形成が残っている場合もあります。

非閉塞性無精子症の主な原因

精子をつくる機能が低下する背景には、先天的な要因や病気・治療による影響などがあります。
原因が明らかな場合もありますが、詳しく検査をしても原因を特定できないケースもあります。

  • 停留精巣の既往
  • クラインフェルター症候群などの染色体異常
  • Y染色体微小欠失
  • 抗がん剤治療や放射線治療による影響
  • 検査を行っても原因を特定できないもの

理事長の言葉

「無精子症」という診断は、あくまで精液中に精子が確認されなかったという結果です。
大切なのは、そこで結論を出すのではなく、精子の通り道に問題があるのか、精子をつくる機能が低下しているのかを確認することです。精巣の大きさ、精管の有無、ホルモン値、これまでの病歴などを総合して、閉塞性か非閉塞性かを見極めていきます。

無精子症の原因は、複数の検査を組み合わせて調べます

無精子症の原因は、複数の検査を組み合わせて調べます

無精子症の原因は、精液検査だけでなく、問診や診察、血液検査などを組み合わせて調べます。必要に応じて追加の検査を行い、現在の状態や原因を確認していきます。

精液検査では精子がいるかどうかを確認します

精液検査では、採取した精液を調べ、精子の有無などを確認します。
精液中に精子が確認されなかった場合でも、その結果だけで閉塞性・非閉塞性のどちらなのか、原因がどこにあるのかまで判断することはできません。また、検査結果にはばらつきが生じることもあるため、必要に応じて再検査を行い、精子の有無を確認します。

問診や診察も原因を探る手がかりになります

無精子症の原因を調べるうえでは、これまでの病気や治療について確認することも重要です。

問診で確認する主な内容

  • 停留精巣など、幼少期の病気や治療歴
  • 鼠径部や陰嚢周辺などの手術歴
  • 感染症や炎症の既往
  • 抗がん剤治療や放射線治療などの治療歴

診察では、精巣の大きさや状態、精管の有無などを確認し、精子が確認されない原因を考えるための手がかりにします。

血液検査ではホルモンの状態を確認します

精子がつくられる過程には、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)、テストステロンなどのホルモンが関係しています。

血液検査でこれらの値を確認することで、精巣で精子をつくる機能がどのような状態にあるのかを判断する手がかりになります。ただし、ホルモン値だけで無精子症の原因を確定するわけではなく、ほかの検査結果とあわせて判断します。

必要に応じて遺伝学的検査を行うこともあります

無精子症の状態やほかの検査結果によっては、染色体検査やY染色体微小欠失検査などが検討されることがあります。

遺伝学的検査はすべての方に同じように行うものではありません。診察や検査結果を踏まえて必要性を判断し、結果がその後の治療方針に関係する場合には、内容について説明を受けたうえで検討します。

遺伝学的検査について詳しく知りたい方は、当院サイトの「男性不妊と遺伝の関係」に関する記事もあわせてご覧ください。

記事:男性不妊と遺伝の関係|関与する疾患と検査の考え方

理事長の言葉

無精子症の原因を考えるときは、一つの検査値だけを見るのではなく、精液検査やホルモン値、診察所見、これまでの病歴などを総合的に確認することが大切です。それぞれの結果を照らし合わせながら、精子が確認されない背景を一つずつ整理し、その後の治療方針を考えていきます。

無精子症には、原因に応じた治療の選択肢があります

検査によって無精子症の原因や状態を確認したあとは、その結果をもとに治療方針を検討します。

当院サイトの「無精子症」ページでは、検査の流れや治療選択肢についてもご案内しています。無精子症と診断された後の流れを詳しく知りたい方は、あわせてご確認ください。

閉塞性無精子症では、精路再建や精子採取を検討します

閉塞性無精子症で検討される主な治療・選択肢

  • 精路再建術:ふさがっている精路を再建し、精子が精液中に出られる状態を目指す
  • 精巣精子採取術(conventional TESE):精巣から組織を採取し、その中から精子を回収する
  • 顕微授精(ICSI):採取した精子を用いて妊娠を目指す場合に検討される

どの方法を選ぶかは、閉塞している場所や原因、精巣の状態などによって異なります。精子を採取した場合には、生殖補助医療を行う医療機関と連携して治療を進めることがあります。

非閉塞性無精子症では、精巣内から精子を探す方法があります

非閉塞性無精子症で検討される主な治療・選択肢

  • 顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE):手術用顕微鏡を用いて、精子が存在する可能性のある精巣組織を探して採取する
  • 精子の凍結保存:精子を採取できた場合に、顕微授精などに備えて保存する
  • 顕微授精(ICSI):採取した精子を用いて妊娠を目指す場合に検討される

micro-TESEは、非閉塞性無精子症で精巣内の精子を探して採取する方法ですが、必ず精子を採取できるとは限りません。精子が見つかる可能性は、精巣の状態、ホルモン値、遺伝学的検査の結果などによって異なるため、事前の評価が重要です。

適応や治療の進め方については、検査結果や精巣の状態などを踏まえて判断します。

当院では、状態に応じてFNA Mappingを検討する場合もあります

非閉塞性無精子症に対するアプローチの一つとして、FNA Mapping(FNAマッピング)が行われる場合があります。精巣の複数箇所から細胞を採取し、精巣内の精子の存在を調べる方法です。

  • 精巣の複数箇所から細胞を採取して調べる
  • 精巣内に精子が存在するかを確認する
  • 結果を踏まえて、その後の治療方針を検討する
  • すべての非閉塞性無精子症の方が対象になるわけではない

FNA Mappingは、すべての非閉塞性無精子症の方に行われる検査ではありません。事前の検査や現在の状態などを踏まえて適応を判断し、その後の治療方針を検討します。

無精子症の治療については、当院サイトの「男性不妊症:高度」ページでも詳しくご紹介しています。治療の流れや検査内容を確認したい方は、あわせてご覧ください。

男性不妊症:高度| 診療案内

理事長の言葉

無精子症には、精路再建、conventional TESE、micro-TESE、FNA Mappingなど複数の選択肢がありますが、すべての方に同じ方法が適しているわけではありません。
閉塞の有無、精巣の状態、ホルモン値、遺伝学的検査の結果、パートナー側の状況によって、検討すべき方法は変わります。治療名だけで判断せず、現在の状態に合った選択肢を一緒に整理することが大切です。

まとめ:無精子症と診断されても、治療を検討できる場合があります

無精子症と診断されても、精巣内で精子がまったくつくられていないとは限りません。閉塞性・非閉塞性など原因や状態によって、その後に考えられる治療の選択肢も異なります。

大切なのは、「無精子症」という診断だけで今後を判断しないことです。精液検査で精子が確認されなかった場合は、必要な検査で原因や現在の状態を確認し、ご自身にどのような選択肢が考えられるのかを専門医と相談していきましょう。

よくある質問(FAQ)

無精子症についてよくある質問

Q1. 無精子症でも精液は出ますか?

はい、無精子症でも精液が射出されることがあります。
精液は精子だけでできているわけではなく、精嚢や前立腺などから分泌される液体も含まれています。そのため、精液が出ていても、その中に精子が含まれているとは限りません。精子の有無は見た目では判断できないため、精液検査で確認します。

Q2. 無精子症でも精巣内に精子がいることはありますか?

はい、無精子症でも精巣内に精子が存在する場合があります。
閉塞性無精子症では、精子がつくられていても精路がふさがっているため、精液中に出てこないことがあります。また、非閉塞性無精子症でも、精巣内の一部で精子形成が残っている場合があります。

Q3. 無精子症でも妊娠を目指すことはできますか?

原因や精巣内の状態によっては、妊娠を目指すための治療を検討できる場合があります。
閉塞性・非閉塞性の違いや検査結果によって、精路再建や精子採取など検討される方法は異なります。まずは原因や現在の状態を詳しく確認することが大切です。

出典・一次情報
日本泌尿器科学会:「男性不妊症診療ガイドライン」(2024年)
WHO:「WHO精液検査および処理に関する実験室マニュアル」(2021年)

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制作情報
監修者:市岡 健太郎

更新履歴
初回公開:2026年10月14日